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美味しいものを美味しく食べれるのは腎臓がしっかりと機能しているから。腎臓が悪くなれば、自由に食べることもできなくなるかも・・・
人生を楽しむためにも重要な腎機能ですが、ある程度下がっても症状がないのも事実。
その一方で、基本的には改善しないので腎機能低下に早く気がつくのが大切となります。まぁ、状況によっては薬剤によって多少は改善することもありますが・・・
検診などでクレアチニンなどで腎機能の検査をします。その評価はクレアチニンのcut offは体重や食生活・人種などの様々な影響を受けるため、クレアチニン値では一様に決められません。
そんな時に重要なのが腎機能推算式。検診などで腎機能の低下をみつけ、早い段階で専門家へ紹介していきます。
日本人のための腎機能推算式とは?
腎機能の評価は糸球体濾過量(Glomerular Filtration Rate : GFR)で行われ、GFR測定のゴールデンスタンダードがイヌリンを使ったGFRの測定とされていますが、その測定は煩雑であることなどから、クレアチニンクリアランスで腎機能の推定を行っていました1)。
では、腎機能の推算式はというと、海外ではMDRD式2・3)がすでに作成されていました
が、日本人のデータによるGFRの腎機能推算式はありません。
当時、MDRD式を使って日本人の係数を作成する試みがありましたが、精度の問題がありました。そこで、日本人に適した腎機能推算式を作成するため、日本腎臓学会ではGFR推算式を作成することになりました1)。
ちなみに、クレアチニンクリアランス(Cleatinine Clearance : CCr)とGFRを混同されることもありますが、異なる指標だと私は考えます。
その話は別の機会に・・・
海外での推算式の問題点
海外ではMDRD式が作成されたことにより推定糸球体濾過量(estimate Glomerular Filtration Rate : eGFR)が算出できましたが、アジア人には正確性が落ちることが知られています1)。
2007年の日本人症例による報告では、MDRD式(4項目式)は日本人では低めに推定され、特にGFR60ml/min/1.73m2以上では精度が低下することが報告されています4)。
この論文には統計ソフトの機能でsmooth curveを作成したと記載があり、平滑化スプライン曲線のような図があります(この統計方法で記載したかはわかりませんが)。この表では推算した結果の方がつねに大きくなり、それが、60〜80mL/min/1.73m2ではさらに大きくなるように見えます。気になる方は論文を参照してみてください。
イヌリンでのGFR測定が可能になった。
作成の背景には検査が可能になったこともあります。
2005年にGFR測定用のイヌリンも承認され、日本でもイヌリンでのGFRの測定が可能になりました。そのため、日本腎臓学会が日本人で酵素法のクレアチニン測定によるeGFRの推算式を作成しました。
この研究の概要
日本人のための腎機能推算式は2009年の論文にて発表されました5)。

腎機能の指標は、GFR測定のゴールデンスタンダードであるイヌリンを使用したGFRを元に作成されています。また、この報告では日本人のための推算式のみならず、既存の腎機能推算式の日本人向けの補正係数を算出しており、別の集団にてこれらの係数にて補正された腎機能推算式と、日本人のための腎機能推算式、それぞれの式の精度を比較しています。
推算式の作成方法は?
日本人のための腎機能推算式は変数を決めて、重回帰分析を用いて作成しています。もともと回帰分析は回帰式を作成して行われます。それを利用しているようです。
日本人のための腎機能推算式の変数は、人種以外はMDRD式と同様ですので、もしかしたら、MDRD式を参考にしているのかもしれません。
推算式に使用される変数(◯が使用している変数)
| 性別 | 年齢 | クレアチニン | アルブミン | BUN | 人種 | |
| MDRD(4項目式)2) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ||
| MDRD(6項目式)3) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
| 3項目式5) | ◯ | ◯ | ◯ | |||
| 5項目式5) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
もう一つのIDMS-MDRD式の日本人の係数は、RMSEが最小となる数値で決めています。
(RMSEについてはこちらを見てください)
一緒に作成された腎機能推算式・係数は?
この研究で報告された腎機能推算式・係数は下記であり、推算式の方にも重要な報告があります。推算式で言うと下記になります。
・日本人のための腎機能推算式(年齢・性別・クレアチニンの3つの変数の式:3項目式(以下、3項目式))
・日本人のための腎機能推算式(年齢・性別・クレアチニン・アルブミン・尿素窒素の5つの変数の式:5項目式(以下、5項目式))
・IDMS‐MDRDの日本人の係数
・Cockcroft-Gault推算式のGFR算出時の日本人の係数
作成された式の比較
この研究で実際に比較された推算式は下記であり、これらを比較しています。
上記7つの式を比べています。①〜③の式は以前に報告された式で④・⑦の推算式は今回の試験で報告された既存の推算式に新しい日本人の係数を算出したもの、⑤・⑥は今回新しく作成された推算式になります。
②・③の推算式は2007年に発表された推算式4)で今回の報告に比べれば症例数は少ないですが、腎臓学会が関わって行ったinulinを使った症例で作成された推算式になります。
比較の指標
今回の指標は正確性の指標と誤差の指標をともに使用しています。
正確性の指標 : P15・P30で比較し、統計解析はχ二乗検定を行って解析を行っています。
P15 : 正しい数値の15%以内の割合
P30 :正しい数値の30%以内の割合
誤差の指標 : RMSEを使って比較しています。
RMSEについて、記事をのせていますので気になる方は見てみてください。
結果は?
誤差での指標のRMSEの場合も、、正確性の指標のP15・P30ともに3つの指標で最もよい成績だったのは「5項目式」になります。
P15では5項目式は他の6式全てに有意差を持って正確性が勝っていることが証明されています。また、P30では「3項目式」では有意差がつかなかったものの、他の5式に対して有意差がついています。
ただ、ガイドラインなどで記載されているのは3項目式。簡便であり、精度も5項目式と有意差はついていないということなんでしょう。
これはMDRD式の時と同様に最初に式が設計され、その後簡易式(MDRD式(4項目式))が作成されると、簡易式ともともとの式の精度に大きな違いがないことが報告され、広まりました。これと似ていると思います。
GFRが高値の正確性は・・・
気になる点はいくつかあります。一つはGFRが高値の場合の精度になります。
今回の報告で研究された7つの推算式すべてに言えることですが、実測したGFRが高い場合には精度が低下します。論文本文にて言及されている記載は(私には)確認できませんでしたが、データをみる限りでは少なくともGFR100以上は精度が低下しているようにも見えます。
GFR実際にデータをみて判断していただきたいのですが、クレアチニンに共通する性質と考えて良いと思います。
影響因子
推奨されている3項目式ですが、報告として精度に影響を与える因子としてはアルブミンが低値の場合には精度が低下する報告があります6)。
比較した推算式 : 3項目式・5項目式・日本人のためのシスタチンC7)の推算式
指標:正確性の指標としてP30を使用
Bias(誤差)の指標として、「イヌリンにより実測したGFR」と「推算式により推算したGFR」の差を使用
症例をアルブミン<3g/dL・3−3.9g/dL・>4.0g/dLの3つのカテゴリーに分類して比較し、それぞれの推算式の影響を各アルブミン値のカテゴリーごとの影響をOne-way ANOVA(一元配置分散分析)・各アルブミン値の推算式ごとの影響を3項目式とシスタチンCの式・3項目式と5項目式でカイ二乗検定で比較しています。
これより、「有意差がなかった」=「アルブミンによる影響ではP30・Biasでともに有意差がなかった」のは5項目式のみ。逆にP30・Biasともに有意差があったのは3項目式のみでした。というか、シスタチンCより、5項目式の方が精度が高い結果となっていることには驚きです。
この報告ではGFRのカテゴリーを異なるカテゴリーに分類してしまうことも報告しています。
これはGFR≧90・60‐89・45‐59・30‐44・14−29・<15の6つのカテゴリーに分類し、3項目式とイヌリンにより計測した実際にGFRを比較しました
すると、アルブミンが低値なほど、実測されたGFRのカテゴリーとは異なる分類になる割合が多くなることが報告されています。
私が見た限り、アルブミンが低い場合にはover estimateが多くなり、特にアルブミン<3g/dLのカテゴリーでは特に影響が大きいように見えます。
このGFRのカテゴリーは、CKD stageを意識したカテゴリー分類でしょうから、検診などで見た時にも低アルブミン血症の方は注意が必要です。
要因として、この報告でfractional excretion of creatinineを測定していますが、アルブミン低下とともに、fractional excretion of creatinineの低下も見られています。
ここからは私見ですが、このクレアチニン分画の低下はクレアチニン産生の低下が予想されますので、その影響をと考えるのが自然だと思います。が、あくまで私見です。
海外での報告では精度が落ちる
日本で推算式が作成された時の成績はとても良かった推算式ですが、海外での研究ではそうとも言えません。
海外での比較では、CKD-EPI式・BISと3項目式を比較した高齢者対象の研究8)があります。この研究はIcelandで行われた研究で、3つの腎機能推算式は、クレアチニンベースの推算式での比較ですが、多くのカテゴリーにおいて有意差をもって精度が劣ることが示されています。このデータだと高齢者だとという条件ではありますが・・・
現在では、3項目式は「日本人のための腎機能の推算式である」ということの認識で良いと思います。少なくとも高齢者では・・・
では、5項目式では・・・というとわかりません。
まとめ
日本人のための腎機能推算式は精度が高く、体重測定がなくても一般化GFR(体表面積補正をしたeGFR)を算出できる、素晴らしい式です。
現時点ではCockcroft-Gault式よりも影響を与える因子は少ないですが、これは研究されていないだけなのか、それとも本当に要因がないのかは不明です。
ただ、アルブミン値など注意点はありますので、それに気をつけながら使用する必要があります。推算式から算出されるGFRは信じすぎないことが大切かもしれませんね。
ただ、使う方からすると算出される数値は正しい事が前提にできると楽なんですけどね。
参考文献
1)堀尾 勝, 腎機能の評価 日内会誌 2012 101:1259~1265
2)Levey AS et al.A simplified equation to predict glomerular filtration rate serum creatinine. JASN, 2000 11. 155A(abstract)
3)Levey AS et al. A more accurate method to estimate glomerular filtration rate from serum creatinine: a new prediction equation. Modification of Diet in Renal Disease Study Group. Ann Intern Med. 1999 Mar 16;130(6):461-70.
4)Imai E et al. Modification of the Modification of Diet in Renal Disease (MDRD) Study equation for Japan. Am J Kidney Dis. 2007 Dec;50(6):927-37.
5)Matsuo S, et al; Revised equations for estimated GFR from serum creatinine in Japan. Am J Kidney Dis. 2009 Jun;53(6):982-92.
6)Horio M et al. Lower serum albumin level is associated with higher fractional excretion of creatinine. Clin Exp Nephrol. 2014 Jun;18(3):469-74.
7)Horio M et al. GFR estimation using standardized serum cystatin C in Japan. Am J Kidney Dis. 2013 Feb;61(2):197-203.
8)Fan L et al. Comparing GFR Estimating Equations Using Cystatin C and Creatinine in Elderly Individuals. J Am Soc Nephrol. 2015 Aug;26(8):1982-9.

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