学会に参加しているとCystatine C神話のようなものがあり、腎機能評価はCystatine Cで行えば正確だ・・・というような風潮を感じます。
まぁ、そんな報告もありますが、いろいろな報告を読んでるとそんな考え方はどうなのかなって思ってしまいます。
そんなCystatine Cですが、日本人のデータからも推算式が作られました。
Cystatine Cを使用した推算式は、Cystatine C単独の推算式、Creatinine/Cystatine Cの併用した推算式など複数ありますが、同じ試験で作成しています。
今回はその話をしたいと思います。
報告当時の背景は?
腎機能の指標におけるCystatin Cの有効性は以前から様々な報告がなされていました。それらをまとめたMeta‐Analysisが2002年に発表され、Cystatine CがCreatinineよりも優れていることが示されます1)。この報告はGFRの測定方法がイヌリン、51Cr‐EDTA、99Tm‐DTPA、iothalamate、iohexolと様々な方法で測定しておりますが、精度の指標として「ROC曲線化面積の比較」、「相関分析として相関係数を比較」とした時、ともに有意差をもってCystatine Cが良い結果を示しました。
この報告は腎機能推算におけるCystatine Cのポテンシャルの高さを示していますし、CystatineCを使った推算式への期待される結果となりました。
その後、Cystatine Cの腎機能推算式が作成されていきます。
海外での腎機能推算式
まずは、海外での腎機能推算式の作成を見てみましょう。
海外での腎機能推算式を語るうえで外すことができない有名な研究グループに「Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration (CKD-EPI)」があります。
このグループのデータベースから、2008年にCreatinine、Cystatin C、Creatinine/Cystatine C併用式の3つの推算式が発表されました2)。精度の指標としてP30(測定値の30%以内の割合)、誤差指標として「測定されたGFRと推算式で算出したGFRの差」と、「この差を測定されたGFRで割って100分率とした値」を用いて比較し、Creatine/Cystatine C併用式が最も良い成績を残しています。
この2008年の研究において高齢者や人種などの背景の変更や、Bias(=偏り)の改善、特にGFRが高い背景の方の改善が必要と考え、2009年にCKD-EPI式(Creatinine単独)が作成されました3)。この研究ではCKD-EPI式(Creatinie単独)とMDRD式との比較がなされており、MDRD式に比べて良い成績を残しています。
Cystatine Cを使った腎機能推算式では、2008年に発表された推算式は標準化されたCystatine Cではなかったため、2012年に標準化されたCystatineCを使って、CKD-EPI式(Cystatine C単独)とCKD−EPI(Creatinine/Cystatine C併用)を作成しています4)。ここでも良い成績を示したのはCreatine/Cystatine C併用式。
また、この報告でCKD-EPIのCreatinine/Cystatine C/Creatinine Cystatine Cの併用式を比較した時、算出されたGFRが低値なほど、他の推算式に比べCystatine C単独の式のP30が低くなることも示されています。ただ、算出されたGFRが低値の方が実測値の差は小さいこともあり、なかなか評価は難しいと思います。
日本での腎機能推算式の作成
では、日本ではどうでしょうか。日本では海外の報告に少し遅れて発表されています。
まず、2009年に日本人データを元に作成されたクレアチニンによる「日本人のための腎機能推算式」が報告されました5)。詳しい話はこちらで。
その後、2011年にCreatinineとCystatine Cの比較をした研究7)を行い、その研究報告を元に、2012年に日本人データによるCystatinC単独の推算式・ CystatinC/Creatinine併用の推算式が作成されました6)。今回の話はこの推算式の話をしたいと思います。
日本人のCystatineを使った推算式の作成
作成時期

Cystatine Cを使った推算式の報告は2013年に報告されています6)。
報告を読んでいる限りは、2011年に報告されているCreatinineとCystatine Cの比較をした
研究7)を随所に使って作成しているように感じます。ですので、2013年の報告で詳しいことを知りたい時には、この報告も確認してみてください。
作成方法
Cystatine C・Cystatine C併用式は2009年に報告された「日本人のための腎機能推算式(Creatinine単独)」で使用したデータを元に作成されています。ですので、GFRの測定方法はイヌリンを使用したイヌリンクリアランスを使用、変数を年齢・性別・Cystatine C・(±Creatinine)とし、モデルを作成して重回帰分析を利用して作成しています。
ただ、当時のデータは非標準品のCystatine Cを使用しているため、標準品のCyatatine Cで再度測定していたりしています。。
一緒に作成研究された項目
日本人のための腎機能推算式(Creatinine単独)の時もそうですが、CystatineC単独とCreatinine/Cystatine C併用の推算式以外にも作成されたものがあります。
CKD-EPI式のCyastatineC単独式とCreatinine/CystatineC併用式の日本人の係数が作成されています。ですが、CKD-EPI式(CystatineC単独)の日本人の係数は、もとのCKD-EPI式(CystatineC単独)と有意差がなかったことから使用されていません。
ですので、推算式の比較では有意差の追加、CKD-EPI式(Creatinine/CystatineC併用式)が使用されています。
また、Cystatine C単独式も2つ作られています。
一つはCyatatin Cの式。もう一つがCytatine Cが腎臓以外から排出する分を考慮したものになります。
この根拠となっているのが、2011年に報告されたCystatine CとCreatinineの比較を行った報告になります7)。この報告の中で、Cystatine Cの対数とGFRの回帰直線を作成し、その切片が腎臓以外のCystatine Cの排出量となるという考えものもと調査され、約8mL/min/m2が腎臓以外で排出されていると報告されました。
これより、腎臓以外から排出されるCyatatine Cも考慮に入れた腎機能推算式も作成されました。
これからの記事は下記のように略させていただきます。
・日本人のための腎機能推算式(Creatinine単独)→Cre単独式(日本)
・日本人のデータで作成されたCystatine C単独の式→CysC単独式(日本)
・日本人のデータで作成されたCreatinine/Cystatine C併用の式→Cre/CysC併用式(日本)
・日本人の係数を使用したCKD-EPI式のCreatinine/Cystatine C併用式→CKD-EPI併用式(日本)
・日本人のデータで作成され、腎臓以外で排出されるCystatine Cも考慮に入れた推算式→CysC式(nonrenal・日本)
・Creatinine単独とCystatine C+nonrenalの平均値を取った式→Cre/CysC(nonrenal)平均式(日本)
使用している腎機能推算式のまとめ
もともと既報があった式が下記2式。
・CKD-EPI式(CystatinC単独)
・CKD-EPI式(Creatinine/CystatineC併用)
・Cre単独式(日本)(項目からおそくらは3項目式?)
そして、下記が今回作成された推算式
・CKD-EPI併用式(日本)
・CyC単独式(日本)
・Cre/CysC併用式(日本)
・CysC(nonrenal・日本)
そしてそれを応用した下記の式
・Cre/CysC平均式(日本)
全部で8つの腎機能推算式。
比較した指標
指標は5つ定められています。意外に多いですよね。
RMSEについては別にまとめていますので、そちらを参考にしてください。
Bias(偏り)の指標:[(実測されたGFR)ー(推算されたGFR)]の中央値
精度の指標:[(実測されたGFR)ー(推算されたGFR)]の絶対値の中央値。統計解析はt検定
誤差の指標:RMSE
正確さの指標:P20とP30。統計解析はχ二乗検定
P20 : 「実測したGFRの」20%以外に入った「推算されたGFR」の割合
P30 : 「実測したGFRの」30%以外に入った「推算されたGFR」の割合
有効性は?
比較はCystatineCとCreatinine/Cystatine C併用式で分けて比較しています。
Cystatin C単独の式の比較
CKD-EPI式(Cystatine C単独)とCysC単独式で比較・CKD-EPI式(CystatinC単独)とCysC(nonrenal・日本)で比較しています。その結果は下記
Bias : 有意な差なし
精度 : CKD-EPI式(CystatinC単独)>CystatineC単独で有意差があり
CKD-EPI式(CystatinC単独)ではCysC(nonrenal・日本)では有意差はなし。
正確さ: 有意差はなし
これより、精度においてCysC単独式のみ有意差がでた結果となっています。
Creatinine/CystatineC併用の3つの式の比較
日本人の係数を使ったCKD-EPI式(Creatinine/Cystatine C併用)とCre/CysC併用式(日本)との比較。CKD-EPI併用式(日本)とCre単独式とCre/CysC(nonrenal)平均式(日本)の比較をしています。
Bias : 3つの式で有意差はなし
精度 : CKD-EPI併用式(日本)>Cre/CysC併用式(日本)で有意差あり。
CKD-EPI併用式(日本)とCre/CysC(nonrenal)平均式(日本)は有意差なし
正確さ: 有意差はなし
これより、Cre/CysC併用式(日本)のみ有意差が出ている結果となっています。
CystatineCとCreatinine/Cystatine C併用式の比較は?
この報告では統計解析を行った記載がありません。なので、わからないが正解!!
ただ、データを見ている限りはCreatinine単独・CystatineC単独よりもCreatinine/CystatineC併用のの腎機能推算式の方が有効の可能性が高いと思います。ただ、実際に統計解析をしてみないとなんとも言えませんね。
海外での成績は?
CysC単独式、Cre/CysC併用式(日本)は海外での試験で、高齢者の中で比較されています。
比較対象はCysC単独式とCKD-EPI式(Cystatine C単独)と他ともう一つの式もあります。
Cre/CysC併用式(日本)とCKD-EPI式(Creatinine/Cystatine C)式と他ともう一つの式。
ですが、あらゆる項目がCKD-EPI式と同等か、成績が有意となっている結果となっています。
アルブミンによる影響はある?
アルブミンによる影響を調べた試験があります8)。
ここで使われた式はCysC(nonrenal・日本)で、アルブミンを3つのカテゴリーに分けて調査しています。
その結果、CysC(nonrenal・日本)の式はアルブミン低値になるにつれて、Bias(偏り)は有意差がないもの、精度=P30 では有意差をもって低下することが示されています。
これは私の私見ですが、Cystatine Cの影響因子を考慮すると偽相関かどうかは考えるところ。この事を語るうえでは、Cystatine Cの報告をもっと話す必要があり、長くなるため、この話は別の機会に記載します。
ですので、もう少し報告を見てみたいと感じています。
日本人のための推算式(5項目式)との比較は?
先ほどの報告には、日本人のための腎機能推算式(Creatinine単独・5項目式)(以下、5項目式)と日本人のための腎機能推算式(Creatinine単独・3項目式)(以下、3項目式)との比較もされていました。
ただ、注意点があります。それはこの研究が、3項目式とCysC(nonrenal・日本)・3項目式と5項目式の比較試験であるため、CysC(nonrenal・日本)と5項目式の比較した統計解析は行われていないことを念頭にいれて、読んでください。
この報告で見るとアルブミン低下に伴う影響を受けていないのは5項目式のみ。精度(P30)で見てみると、アルブミン≧4.0g/mLの時には大きな差はありませんが、低値になるにつれて5項目式の優位になっていくのがわかります。まぁ、統計解析がないので何とも言えないところはありますが・・・
今後、比較試験が期待されます
これらより・・・
日本人のCyC単独式(日本)、Cre/CysC併用式(日本)、CysC(nonrenal・日本)、Cre/CysC平均式(日本)が開発されましたが、CKD-EPI併用式(日本)との比較試験が有意とはなっていません。そのせいか、研究などで使用された報告はあまり見られていません。もしかしたら、実際にはには使用している施設はあるかもしれませんが・・・
現在、よく使用されている日本人のための腎機能推算式(Creatinine単独)の3項目式や5項目式よりも良い成績が上がるようであれば、もっと使用されても良いと思います。そういう意味では、それらの式との比較試験/統計解析がほしかったと思います。
また、この研究では推算式作成の研究について考えさせられる研究だと思います。通常、日本人のための腎機能推算式は日本人データに合わせて作られるため、精度が高くなるはずですが、日本人データでもそれほどの差がなく、海外では有意差を持って差が出てくる結果となっています。
CKD-EPI式の特徴としてはCystatine C とCreatinineがそれぞれ高値・低値で推算式が異なることが挙げられると思います。これが、これがCKD-EPI式の精度の高い理由かもしれません。
現在のところ、日本人のデータで、この推算式を使用した時の注意点、影響因子などの報告は少ないですが、何事も万能というわけではないと思います。海外データでのCKD-EPI式の注意点と同様に扱うのが正しい姿かと思います。
ただ、今回の報告ですが、P20・P30で有意差がなかったので、推算式の性能の差はそれほどなかったのでは・・・ ただ、比較した時の背景が、CKD-EPI式が有利な背景だったのではと考えてしまうのは私だけでしょうか・・・
参考論文:
1)Dharnidharka VR et al. Serum cystatin C is superior to serum creatinine as a marker of kidney function: a meta-analysis. Am J Kidney Dis. 2002 Aug;40(2):221-6.
2)Stevens LA et al.. Estimating GFR using serum cystatin C alone and in combination with serum creatinine: a pooled analysis of 3,418 individuals with CKD. Am J Kidney Dis. 2008 Mar;51(3):395-406.
3)Levey AS et al.; CKD-EPI (Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration). A new equation to estimate glomerular filtration rate. Ann Intern Med. 2009 May 5;150(9):604-12.
4)Inker LA et al. CKD-EPI Investigators. Estimating glomerular filtration rate from serum creatinine and cystatin C. N Engl J Med. 2012 Jul 5;367(1):20-9.
5)Matsuo S et al. Revised equations for estimated GFR from serum creatinine in Japan. Am J Kidney Dis. 2009 Jun;53(6):982-92.
6)Horio M et al. Collaborators Developing the Japanese Equation for Estimated GFR. GFR estimation using standardized serum cystatin C in Japan. Am J Kidney Dis. 2013 Feb;61(2):197-203.
7)Horio M et al. Performance of serum cystatin C versus serum creatinine as a marker of glomerular filtration rate as measured by inulin renal clearance. Clin Exp Nephrol. 2011 Dec;15(6):868-76.
8)Horio M et al. Lower serum albumin level is associated with higher fractional excretion of creatinine. Clin Exp Nephrol. 2014 Jun;18(3):469-74.

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