※医療者、向けに作成しております。ここでの情報は自己責任で利用してください。
肝障害が起きると、使用薬剤の中で薬剤性肝障害を起こしそうな薬剤を探してしまうのは、薬剤師としての性でしょうか。
薬剤性肝障害についての薬剤の情報がまとまったものはあまりありませんが、米国のデータベースに「LiverTox」があります。
薬剤性肝障害とは
薬剤性肝障害はDILI(Drug-induced liver injury)と呼ばれることがあります。
その名の通り、薬剤による肝障害が起こること・・・ ざっくりですが、それでいいと思います。重篤副作用疾患別対応マニュアルにも「薬物性肝障害」として発表されていますし1)、薬剤の代謝される臓器であるせいか、多くの薬剤の添付文書に有害事象として記載があります。
2023年から2024年にかけては、薬物性肝障害スコアリングシステム RECAM-J 2023が発表されたり2)、免疫チェックポイント阻害薬による肝障害の診断指針3)が出てきたりと様々な情報が提供されてます。
ですが、各々の薬剤の情報となると、まとまったものはあまりありません。そんな中、LiverToxは重要なデータベースであることは間違いありません。
LiverToxとは
2012年4月にリリースされたデータベースであり、National institute of Diabetes and Digetive and Kidney Diseases (NIDDK)のメンバーが執筆した薬剤性肝障害に関する情報サイトです4)。
無料で公開しており、処方薬、市販薬、ハーブ製品、栄養補助食品が原因の薬剤性肝障害に関する最新かつ包括的で偏りのない情報を提供しています。
定期的に更新され、薬剤数も徐々に増えてきています。
米国のデータベースであることに注意
当然ではありますが、LiverToxは米国でのデータベースなので米国で承認されていない薬剤だと情報が提供されていない可能性が高くなります。例えば、セフメタゾール(Cefmetazole Sodium)はありませんし、漢方についても記載を見つけることは出来ませんでした。
米国における新薬や、日本で先行して承認された薬剤も情報はない可能性が高いと考えて良いと思います。
人種差についても念頭に置く必要があるかもしれません2)。
LiverToxの使用方法は
LiverToxを使用するには下記、ホームページより情報にアクセスすることができます5)。
このwebサイトの下に薬剤の一覧があり、該当の薬剤名をクリックすればOK。
Over Viewを確認することができます。
LiverToxの内容は
LiverToxは下記の内容で書かれています。全ての薬剤は確認してませんが、大きな括りとしては下記。
ただ、全薬品にすべての項目が書かれているわけではなく、薬剤によっては記載されていない項目もあります。
Introduction
薬剤の系統などを記載した導入部分
Background
薬剤の作用機序など一般的な内容がintroductionよりも詳しく記載しています。
Hepatotoxicity
肝障害による症状や、検査値の変化を記載してあります。発症までの期間、改善までの期間が記載されています。
Mechanism of injury
肝障害の機序が記載されている
outcome and Management
肝障害が発症した後の対応、注意点が記載されています
CASE REPORT
肝障害が生じた症例について記載されています。
PRODUCT INFORMATION
商品名(米国での商品名になると思います)や薬剤の分類、薬剤の分子式、構造が記載されています
ANNOTATED BIBLIOGRAPHY
参考文献になります
ちなみに、all Englishです。
当然のことながら、このデータベースはすべて英語。英語に自信がなければ、google chromeで該当ページを開いて、「翻訳」する方法がありますが、この翻訳には保証はありません。自己責任で、確かめる程度に翻訳を使用しましょう。
DILIとは決めつけない。
薬剤師をしていると時折、薬剤を使用しているとDILIであると決めつける方に出会います。医療者は少ないですが、患者では多いと感じます。薬剤を使用している最中に肝障害があれば、DILIであることは否定できないとは思います。ですが、RECAM-j 2023やirAEの肝障害の診断基準にもありますが2・3)、他の原因の除外についての記載があります。
医師の範疇にはなりますが、情報提供をする時にも、DILIと決めつけるような情報提供はしないようにすることが大切だと考えています。
有用かなと思った方は・・・
有用かなと思った方は、まずは1回データベースを見てみることをオススメします。見たこともないtoolはいざとなった時に使用することは出来ません。少なくとも私は・・・
私としては早く日本版(日本語版?)のLiveToxが出ないかなぁ〜と、思う日々です・・・
英語はしんどい・・・
【広告】
参考文献
1)重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性肝障害https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1i01.pdf
2)田中 篤 薬物性肝障害スコアリングシステム―RECAM-J 2023― 肝臓 2024; 65 ( 10) 482-490
3)伊藤 隆徳 竹内 康人 水野 和幸 今井 径卓 吉丸 洋子 阿部 和道 阿部 雅則 松浦 敬憲 横出 正隆 塩川 雅広 児玉 裕三 小無田美菜 原田 憲一 田中 篤 免疫チェックポイント阻害薬による肝障害の診断指針 肝臓 2024; 65(6) 268-276
4)National Library of Medicine National center for Medicine information LiverTox: Clinical and Research Information on Drug-Induced Liver Injury [Internet].
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK548196/
5)National Library of Medicine National center for Medicine information
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK547852
コメント