先日、ニュースで「メディカルダイエットの薬をもらって使ったら、副作用が出たので、消費者庁に相談した」って報道がありました。適応外使用での報道だったようですし、消費者庁への相談の前に処方した医療機関に相談してくださいってことなんですが、消費者庁も大変だと思います。
でも、適応外使用って全部ダメって言うわけでもないし、難しいものです。
ということで、あらためて適応外使用についてまとめてみました。
適応外使用って知っていますか?
適応外使用とは、承認されている効果・用法以外の方法・用途で使用することを指します。たとえ、日本で使用されている薬剤であっても、厚生労働省に認められていない(承認されていない)病名や、患者の状態への使用であれば、適応外使用となります。
医薬品の使い方って・・・
もともと医療用医薬品の使い方は臨床試験で確かめられた方法のみなので、厳しく制限されています。医療用医薬品の新しい使い方、薬剤が認められるのは大変で時間もかかる。
でも、医療の研究は日進月歩!!医療者は基本的には「みんなを元気にしようとするので(と、思ってます)」より良い薬の使い方があれば、そうしたい気持ちがあります。そうすると、適応外使用につながっていきます。
他にも現在認められた薬の使い方では対応できない場合にも適応外使用がされることがあります。
適応って、どうすればいいの?
医薬品医療機器等法(医薬品、医療機器などの品質、有効性および安全性の確保などに関する法律:薬機法)に基づいて厚生労働省が認めた(≒承認した)方法で使用が求められています。
その承認を得るために、臨床試験をして有効性のデータを出し、それを医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて審査。そこで作成した審査報告書をもとに、薬剤・食品衛生審議会で審査して、最終的には厚生労働省が承認をする流れ。
新しい使用方法(適応拡大)の場合にも厚生労働省の承認が必要ですので、年単位の時間と多くの費用が必要になります。
デメリットは?
では、適応外使用することによるデメリットは何でしょうか?
基本的には保険がきかない
基本的には保険適応ではないということでしょうか。ほとんどの方は、医療費を7割〜全額を割り引いて診療を受け、薬をもらっていますが、これが使えない。なので、受診費用などすべて、保険が効かない=割引なしでの支払い or 医療機関の持ち出し(保険での割引分は病院が受け持つことが多いでしょうか)となります。
じゃ、保険が効かないところだけ、10割の費用にしてよって気持ちになりますが、これは国が禁止しています。(「混合診療」と言います。)
例外としては「公知申請」というものがあります。適応外使用であっても科学的根拠がしっかりしているものは保険を使えるようにしましょうというものです。(昭和55年に出た通知から、それらを対応した制度のようです。)
副作用救済制度の対象としては
副作用救済制度とは「医薬品を適正な使用方法で使用して副作用があった場合には、補助が出る」というもの。基本的には医薬品の適応内の使用であれば、一部を除いて副作用救済制度の対象となります。
適応外使用である場合にも、2017年の時点では副作用救済制度の対象になる可能性はあります(医薬品・医療機器等安全情報 No.374)。ですが、しっかりとしたデータがあり広く使用されているなど条件があるため、対象とならない可能性もあります。
科学的根拠は・・・
もともと承認を得るための臨床試験を行っていないので、しっかりとした科学的根拠がない可能性はあります。つまり、しっかりとしたデータに裏打ちされた薬剤の使用方法になっているかが重要ってことになります。
適応の有無にかかわらず、すべての薬剤は必ず副作用が出ず、効果だけが出るって事は言えないため、問題が起きないということは言えません。
ですが、適応外使用に関しては科学的根拠がしっかりとしていないといけないため、そこがしっかりしていないとされれば、何かあったときには問題となりやすい。逆に適応があるということは、承認を得るための臨床試験でしっかりとしたデータがあるので問題が起きにくいし「副作用救済制度」の対象(一部例外あり)という保証もあります。
適応外使用を行う前に
現在では、倫理委員会など主治医以外のところで審議を行い、了承を得た後に、有効性・危険性をしっかりと説明して同意していただいてから使用する場合があります。
他にも、先程と同様、倫理委員会など主治医以外のところで審議を行い、了承を得た後で、ホームページに使うことがあることを記載してある事もあります。
国のご意見は?
国としては、広く使われるすべての医薬品は適応を目指していきましょう、というスタンスのようです。その方が日本人に対してのしっかりとした科学的根拠をもって使用できるということになるし、保険適応も問題なく使うことができると考えればその通り。
ただ、時間と費用の問題があります。また、もともと少数例しかいない疾患や状態のケースであれば、なかなかデータが集まらないということもありますので、その場合には難しいと思います。
じゃ、適応外使用はしてはいけないのか
適応外使用でも、世界で広く使用されている方法もあります。また、ガイドラインという学会で作成されている資料にも推奨されている使用方法もあり、一概には使用してはいけないとは言えないというのが本音。適応外使用を使ってはいけないとなると、なかなか治療が難しくなる分野もあると思います。
例えば、抗真菌薬の目薬はピマリシン点眼液/眼軟膏しかありません。これが副作用もなく、すべての人に使えて、どの菌でも効けばいいんですけどね。効かない、または使えない(アレルギーなどもありますからね)場合は他の方法も検討が必要になります。
命に関わるものもありますし、使えば助かる事もあるので使ってはダメって言われると、医療をする側からするとかなり厳しくなりますので、助けたい気持ちがあれば、必要になる時があります。
これがもめるんです。
実は医師と薬剤師でよく意見が割れるところです。どちらかというと、薬剤師は添付文書に記載してある用法を中心に適応外はできるだけ使わないという気持ちが医師よりも強いイメージ。
ただ、長く薬剤師として活動をしていると、そこは適応のあるものでいいんじゃない?って感じる時があるのも事実ですが、やっぱり必要な時もあります。
言いたいことは
適応外使用は必要なければ使わなくても良いと思いますが、必要といえば必要。使ってはいけないとは言わないが、使用するときには使用する方にも、丁寧な説明・納得したうえで行うことが重要だとあらためて感じました。
それと、基本的にはなにかあれば処方医療機関・処方医の対処が基本となるのでそちらにご連絡し、消費者庁にはご迷惑をおかけしないようにしましょう。
参考)
消費者庁「美容医療を受ける前にもう一度」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/information_002/assets/information_002_240202_02.pdf
厚生労働省「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta7596&dataType=1&pageNo=1
厚生労働省「保険診療における医薬品の取扱いについて(昭和55年9月3日付け保発第51号厚生省保険局長通知)」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1027-16e_0004.pdf
厚生労働省「適応外使用の保険適用について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018toj-att/2r98520000018tzy.pdf
厚生労働省医薬・生活衛生局「医薬品・医療機器等安全情報 No.347」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000180016.pdf
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